VoIP
Cisco IP SLA監視(VoIP監視)は、NetFlow Analyzerのオプション機能であり、実行にはライセンスが必要です。NetFlow Analyzerは、VoIPネットワークの主要なパフォーマンス メトリックを継続的に監視して、そのステータスを判断します。測定するパラメーターには、ジッター、遅延、パケット ロスなどがあります。
ジッター: ジッターは、到着するパケット間の遅延の変動を示します。ジッターが大きいと、通話中の音飛びが発生しやすくなります。 同期外れなどが原因で不快なノイズが会話に混ざることもあります。
遅延: 測定される遅延は、送信元サイトの発信者の音声が宛先サイトの通話相手に到達するのにかかる時間であり、遅延と呼ばれます。 ネットワーク遅延は音声転送の遅延の一因となり、会話に間隙や中断が生じます。
パケット ロス: パケット ロスは、ネットワーク内のあるリソースから別のリソースへの転送中にデータが失われることです。 パケット ロスはネットワーク遅延の際、多々、発生しています。
MOS: VoIPトラフィックの品質はジッター コーデックで決まり、各コーデックごとに音声品質が決まります。 平均オピニオン評点は、音声コーデックを測定するための標準であり、1~5(非常に悪い~非常に良い)のスケールで測定されます。 音声品質は聞き手の主観的な反応で決定しています。
しくみ
Ciscoの IP SLAは、Cisco IOSソフトウェアのアクティブな監視機能であり、前述のパラメーターをシミュレートし、計測して、SLAを順守するのに役立ちます。
Cisco IP SLAは、UDPパケットが送信元装置から宛先装置へ送信される場合の UDPジッター運用を可能にします。このシミュレート トラフィックは、ジッター、往復遅延、パケット ロス、遅延を判断するのに使用されます。データは、指定期間に複数回のテストで収集し、ネットワークが1日や数日などのさまざまな間隔でどのように動作しているかを判定します。VoIP監視は、VoIPネットワークのパフォーマンスを判断するのに役立つ有益なデータを収集し、ネットワーク パフォーマンス評価、トラブルシューティング、継続的なステータス監視を行うために必要な情報を提供します。
VoIP監視を設定する方法
前提条件
オフィスから別の場所へのリンクをテストする場合は、両端にCiscoルーター(IOSバージョン12.4以降)が必要です。
監視の設定手順
NetFlow Analyzerを使用して、「コール パス」の音声とビデオの品質を監視可能です。
コール パスとは、本部にあるルーターと、支部にある監視対象のルーターのあいだの WANリンクのことです。
手順1:LAN内のルーターからNetFlow AnalyzerにNetFlowをエクスポートします。そして、そのルーターに対してSNMP読み取りおよび書き込みコミュニティが正しく設定されていることを確認してください。
手順2:監視する宛先の装置で SLAレスポンダーを有効化します。この手順は後述します。
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宛先のルーターで CLIセッションを開き、次のようにして EXECモードを有効化します。
Router>enable
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グローバル コンフィグ モードを開始します。
Router#configure terminal
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IP SLAレスポンダーを有効化します。
Router(config)#ip sla responder
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VoIPパフォーマンスを監視するすべての宛先ルーターで上記のステップを繰り返します。
手順3:監視するコール パス(送信元と宛先のルーター)を選択します。
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右上の追加アイコン
をクリックして、監視の名前を入力します。
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NetFlow Analyzerで検出されたルーターのリストから送信元のルーターを選択し、関連するインターフェースを選択します。
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宛先のルーターを指定するには、「検索」オプションを使用して検出されたルーターから選択するか、「追加」オプションを使用して宛先ルーターのIPアドレスを指定し、詳細を送信します。
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設定しようとしている監視の概要が表示されます。「装置に適用」をクリックして装置の詳細を送信します。この設定には数秒かかります。
数秒後ページを更新して、新しい確認を表示します。データは、設定時点から1時間ごとに収集されます。
設定の詳細を編集するには、それぞれのテンプレートに移動し、変更を加えて詳細を保存します。新しい監視を作成すると、更新された値が有効になります。設定が完了すると、ルーターは指定された間隔の60秒(デフォルト値)でデータの収集を開始します。NetFlow Analyzerは1時間ごとにこの統計(収集データ)を更新し、1時間の設定後にレポートを作成しますす。
WANの監視
NetFlow AnalyzerのWAN往復遅延監視機能はオプション機能であり、実行にはライセンスが必要です。WAN RTT監視は、WANの可用性、遅延、Quality of Serviceを監視するために使用されます。設定されたしきい値に違反するとアラートが発生し、管理者はすぐに障害に対応できます。
WAN RTT監視は、Cisco IOS IP SLAを使用して2つの場所間の遅延を監視します。そのため、WAN RTT監視を使用して監視するいずれかの場所は、IP SLAエージェントを備えたCiscoルーター(IOSバージョン12.4以降)が必要です。IP SLAエージェントが有効になっている場所は送信元として機能し、宛先は他の場所の任意のIPにすることができます。
はじめに
監視を追加する

すべての監視
「IP SLA」の下の「WAN」タブには、デフォルトですべてのWAN監視(ステータス、最大RTT、平均RTT、最小RTT、違反、可用性)が表示されます。監視をクリックすると、各監視の詳細が表示されます。
「すべての監視」タブには、監視されている使用可能なパスがすべて表示されます。パス名をクリックすると、ルーターのNetFlowトラフィック レポートとともにパスとしきい値の詳細を表示できます。グラフは、しきい値違反の割合、エラーの割合、往復遅延を示しています。「すべての監視」タブを使用して、これまでに作成した監視の履歴を追加、削除、表示することもできます。
WAN監視の設定は、「設定」 > 「監視」タブから実行できます。
ビデオ監視
IP SLA動画オペレーションについて
ネットワークにビデオ トラフィックが充満すると、動画のネットワークへの影響を考慮することが重要となります。
ネットワークにビデオの新しいエンド ポイントを設定する場合、ネットワークにどの程度のビデオ処理能力があるか、事前評価が必要です。これには、シミュレーションでの対応が可能となっています。シミュレーションでは、ネットワークにリアルタイムでビデオ トラフィックと同様の条件を与える状況も考慮します。結果は、トラフィックのパフォーマンスを評価し、ビデオを展開する際にパフォーマンスのベースラインを決定するのに役立ちます。
ネットワーク環境は目まぐるしく変化しています。このため、ネットワークで増え続ける要求を満たすには、継続的な評価が必要です。
IP SLA:動画オペレーションは、ネットワーク上のストレス テスターとして機能します。リッチ メディア アプリケーションがネットワークの他のアプリケーションにどの程度影響するかの検証が可能です。これにより、ネットワークがビデオ トラフィックをスムーズかつ効果的に処理できるようになります。
メリット
IP SLA動画オペレーションには、次の利点があります。
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IPサービス レベルの理解:重要パラメーターの監視で、ネットワーク内のさまざまなIPサービスのレベルを理解できます。
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生産性の向上:ネットワークのサービス レベルが高次元であれば、生産性にも直接、良い影響が出ます。音声やビデオ アプリケーションは、組織ユーザーの場合、生産性向上のため使用することが多いので当然です。
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運用コストの削減:クラス最高のサービス レベルを備えたアプリケーションは後方支援にかかるコストを削減し、その結果、運用コストを削減、運用効率を高めます。
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ネットワーク障害の間隔の低下:トラブルシュートの迅速化で、障害を制御下に置けます。ダウン タイムの短縮はコスト削減につながります。
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ネットワーク準備状況評価:IP SLAの動画オペレーションは、ネットワークでビデオを展開する準備ができているかどうかを評価する目的で使えます。
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ネットワークのトラブルシューティング:ネットワークのパフォーマンスが低下した場合、特定し、修正する必要がある障害があります。IP SLA VoIPは、この目標の達成に役立つ重要なメトリックを提供します。
IP SLA:動画オペレーションのメトリック
NetFlow Analyzerは、次のように広範かつ具体的なカテゴリのデータを表示できます。 ジッター:ジッターでは、次のサブタイプが表示されます。
- 最大正ジッター
- 最小正ジッター
- 平均正ジッター
- 最大負ジッター
- 最小負ジッター
- 平均負ジッター
- 平均正ジッターと負ジッター
- 送信元/宛先でのIAジッター(Inter Arrival:到達間)
- 遅延:最大、最小、平均
- パケット情報:遅延パケット数、スキップしたパケット数、シーケンス外のパケット数、損失したパケット数。
IP SLA動画オペレーションの前提条件
- IP SLA動画オペレーションの送信元とレスポンダーの両方の装置が、プラットフォームによるビデオ トラフィックの生成とリフレクションを実行できる必要があります。
- 正確な片道遅延を測定するには、送信元とレスポンダーの装置間でNetwork Time Protocol(NTP)で実現されるような時刻の同期が必要です。
IP SLA動画オペレーションの制限
- この機能は、プラットフォームによるビデオ トラフィックの生成とリフレクションを実行できる、Cisco Catalyst 3560、3560-E、3560-X、3750、3750-E、3750-Xシリーズ スイッチなどのCisco装置でのみサポートされます。
- IP SLA動画オペレーションは、往復遅延(RTT)のトラフィックをサポートしません。
- IP SLA動画オペレーションは一方向のトラフィックのみをサポートするため、送信元とレスポンダーの両方でオペレーションとレスポンダーを設定する必要があり、両方の装置でSNMPアクセスをサポートする必要があります。
- IP SLA動画オペレーションは、IPv4ネットワークでのみサポートされます。